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東野圭吾『片想い』あらすじ・見どころ解説 ※ネタバレ無し

『片思い』は2001年に出版された長編ミステリー小説で、2017年にはテレビドラマ化されています。

本書はLGBTを取り扱った作品で、理解されない側の”片想い”が緻密に描かれています。

まるで時代を先取りしたかのようなテーマ選定。出版された2001年から今年で20年が経ちます。 

現在は『片想い』で描かれているような方々が少しでも生きやすい世の中に近づいているのでしょうか?

この記事では
『片想い』の重要部分のネタバレは避け、あらすじに沿い、見どころを解説していきます。

あらすじ

十年ぶりに再会した美月は、男の姿をしていた。彼女から、殺人を告白された哲朗は、美月の親友である妻とともに、彼女をかくまうが……。十年という歳月は、かつての仲間たちを、そして自分を、変えてしまったのだろうか。過ぎ去った青春の日々を裏切るまいする仲間たちを描いた、傑作長篇ミステリー。

東野圭吾『片想い』より引用

主な登場人物

西脇哲朗:フリーのスポーツライター。帝都大学、元アメリカンフットボール部のクォーターバック。

西脇理沙子:西脇哲朗の妻。帝都大アメリカンフットボール部の元、マネジャー。

日浦美月:帝都大アメリカンフットボール部の元マネージャー。西脇哲朗、理沙子らに自らの殺人と性問題について告白する。

中尾功補:帝都大、元アメリカンフットボール部の名ランニングバックで、西脇哲朗の親友。美月の元恋人。

早田幸弘:新聞社に勤務。帝都大、元アメリカンフットボール部のタイトエンド。

須貝:帝都大、元アメリカンフットボール部のエースキッカー。損害保険会社に勤務。

佐伯香里:美月が以前、勤めていた『猫目』のホステス。ストーカー被害にあう。

見どころ

「日浦美月」1つ目の告白

年に一度の帝都大、アメリカンフットボール部の集まりがあったその日。西脇哲朗、須貝の前に元マネージャーの日浦美月が現れます。

10年ぶりの再会でした。

しかし、とある事情により声を発しない美月のため、仕方なく哲朗の家で話を聞くことになります。

そこで、美月はこう語ります。

「オレは男だったんだ。ずっと前から。おたくらと会うより、もっと昔から」

東野圭吾『片想い』より引用

つまり、自身の心が男であると告白したのです。

髪は短くカットされ、服装も男そのものでした。なにより2人を驚かしたのは、声が女性のものでなかったことでした。

美月曰く、幼き頃から自らの性別(女性)に対して疑問を持っていた。しかし、母親がそれを認めず矯正を図ってきたことから、”女であるという演技”をして過ごしてきたとのこと。

美月の告白の後日、西脇家をある人物が訪ねてきます。

その人物とは美月の元恋人、中尾功補でした。

中尾は事情を把握したうえで、哲朗にこう答えます。

「あの時俺と一緒にいた美月は間違いなく女だった。そう信じている」

東野圭吾『片想い』より引用

中尾と付き合っていた時、美月は男だったのか。それとも女だったのか?

はたまた、どちらでもなかったのか…

「日浦美月」2つ目の告白

美月は哲朗に対して”殺人罪で警察に追われている”ことを告白します。

「罪状は殺人罪ってことになる。人を殺したんだ」

東野圭吾『片想い』より引用

美月はこの殺人を犯すまで、『猫目』という店でバーテンダーとして働いていました。

その『猫目』のホステスである、佐伯香里に対して、ストーカー行為をはたらく客がいたのです。美月は香里を守るために、正当防衛のような形で客を殺してしまった、と話します。

家に帰った哲朗は理沙子・中尾・須貝と話し合い、美月を警察からかくまうことを決めます。

しかし、やがて美月は哲朗たちに迷惑をかけまいと、消息を絶ってしまいます。

そこで、哲朗と理沙子は美月を見つけ出すために動き出します。

戸籍交換システム

哲朗が美月を探し出すために捜査を進める中で、驚愕の事実が見えてきました。

それが戸籍交換システムです。

戸籍交換システムとは、自らの心と肉体の乖離に悩む者たちが、戸籍を交換することで、別の名前や性別を手に入れるシステムのこと。

実際にこのシステムは機能しており、何例か戸籍交換に成功しているようでした。

そして、とある疑問が浮かびあがります。

「美月も戸籍交換をしようとしていたのか…」

このとき、哲朗は予想以上に大きな真相を暴こうとしていることに気が付くのです。

戸籍交換システムの裏側に潜む、複雑に絡み合った真相とは?そして、システムの中枢を担った意外な人物とは…

昨日の友は今日の敵

新聞社に勤める早田幸弘はひょんなことから美月が引き起こした事件を知り、調査を始めます。

すると、ある証拠から美月が事件に関与していることを突き止めます。

そして、哲朗や理沙子が何かを隠していることを確信し、こう述べます。

「はっきりいう。俺はおまえたちの味方にはなってやれない」

「おまえたちは何かを知っている。知っていて、それを隠そうとしてる」

「俺の仕事は隠されたことを暴くことだ。それがどんなに人を傷つけることになるかどうかなんてことは、とりあえずは考えない。だから、おまえたちが隠そうとしていることも、俺は暴かなきゃならない」

東野圭吾『片想い』より引用

かつて、帝都大アメリカンフットボール部で苦楽を共にした戦友は、自らの信念を貫き、真相を暴くことを宣言します。

はたして早田は哲朗や美月を追い込む、”敵”となってしまうのでしょうか。

感想

先見の明とでもいうのでしょうか、2001年の段階でこのようなテーマを選定し、問題提議されている事実に驚きました。

LGBTの側に立つ方々の”理解されたい”といった切実な『片想い』が随所に散りばめられ、性別という男女の根本について多角的に捉える必要を感じました。

かつての戦友と争いながらも、何かを守ろうとする主人公。それは過去であって、未来でもある。

以前、本気でスポーツに取り組み、仲間とともに切磋琢磨した私からすると、痺れるストーリーでした。

ABOUT ME
テイケチ
◇25歳/男 ◇医療職/田舎で一人暮らし ◇小説紹介してます