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東野圭吾『真夏の方程式』原作 あらすじ・見どころ解説※ネタバレ無し

『真夏の方程式』は2011年に出版された推理小説でガリレオシリーズの第6弾。2013年には映画化されています。

16年前の萩窪と現在の玻璃ヶ浦を結びつけた出来事とはいったい…

自分を犠牲にしてまで守りたいという「献身」が招いた悲しい物語。

事件の真相に物理学者の湯川が迫ります。

この記事では
『真夏の方程式』の重要部分のネタバレは避け、あらすじを解説していきます。

あらすじ

夏休みを玻璃ヶ浦にある伯母一家経営の旅館で過ごすことになった少年・恭平。一方、仕事で訪れた湯川も、その宿に宿泊することになった。翌朝、もう一人の宿泊客が死体で見つかった。その客は元刑事で、かつて玻璃ヶ浦に縁のある男を逮捕したことがあったという。これは事故か、殺人か。湯川が気づいてしまった真相とは―――。

東野圭吾『真夏の方程式』より引用

主な登場人物

湯川学:都大学物理学准教授。海底鉱物資源開発の説明会に出席するために玻璃ヶ浦へ出向く。

草薙俊平:警視庁捜査一課に所属。

柄崎恭平:小学4年生。両親が仕事で留守にしている間、玻璃ヶ浦で伯母(川畑家)一家が経営する緑岩荘に泊まる。

川畑成実:15年前に東京から玻璃ヶ浦に移り住み、両親が経営する緑岩荘の手伝いをしている。年齢は30歳。環境保護活動に注力する。

川畑重治:成美の父。東京でエンジニアをしていたが、緑岩荘を継ぐために15年前に玻璃ヶ浦に帰省。

川畑節子:重治、成美とともに緑岩荘を切り盛りする。化粧っけはないが美人。

塚原正次:元刑事。湯川、恭平と同じく緑岩荘に宿泊する。

仙波英俊:16年前に萩窪で起きた殺人事件の犯人。

三宅伸子:16年前に仙波英俊に殺害された元ホステス。

多々良:警視庁の管理官。かつての塚原の後輩。

見どころ

元刑事の死

湯川学と柄崎恭平の宿『緑岩荘』には塚原正次という元刑事も宿泊していました。

塚原は湯川がアドバイザーを務める、海底鉱物資源開発の説明会に参加するために玻璃ヶ浦に来ていたのです。

しかし、塚原は緑岩荘に宿泊した初日の夜に姿を消します。

宿泊客の姿が見えず、不審に思った重治は周囲を捜索しますが見つかりません。

そして翌日、塚原は堤防の下で死体となって発見されます。

地元警察は
「酒に酔い、堤防から落ちたのではないか」との見立てをします。

しかし、警視庁の多々良は転落死にしては全身に内出血が見当たらないことを疑問視し、転落前から塚原は死んでいたという推理を展開します。

その後の解剖の結果多々良の推理は的中し、塚原は一酸化中毒で転落前に亡くなっていたことが判明しました。

一酸化中毒というのは密閉された空間でしか起こりません。

つまり、塚原は堤防とは別の場で一酸化中毒によって死亡し、何者かによって堤防から岩場に突き落とされたことになります。

これは事故死に見せかけた他殺だったのです。

塚原は亡くなる前日、玻璃ヶ浦にある別荘地を訪れていたことがわかりました。

目撃情報によれば塚原は『仙波英俊』の家を見ていたようです。

仙波英俊とは、16年前に東京都の萩窪で起きた殺人事件の犯人。塚原自らが捕らえた人物です。

何故、塚原はかつて捕らえた殺人犯の別荘を見ていたのか。そして、彼が玻璃ヶ浦に来た本当の目的とは…

16年前の事件

16年前の東京都、萩窪。

そこで仙波俊英は元ホステスの三宅伸子を刺殺しました。

動機は「貸した金を返さなかったからカッとなって刺した」というもの。

構造としては極めて単純で分かりやすいものでした。そして仙波は事件発生の2日後には捕まっています。

ではなぜ、塚原は16年前に殺人を犯した仙波の別荘を見に行ったのか…

警視庁管理官の多々良はかつて塚原に対して「一番印象に残った事件」について尋ねた時のことを、こう語っています。

「仙波英俊―――。しばらく考え込んだ後、塚原さんはその名前を言ったんだよ。私は正直言って戸惑った。まるで記憶になかったからだ」

東野圭吾『真夏の方程式』より引用

塚原の返答に疑問を感じた多々良はわけを尋ねます。

しかし、塚原は「気まぐれで言ってみただけだ」とはぐらかしたのです。

その後、多々良は深く追及しなかったようです。

しかし、塚原が無くなる前日に仙波の家を見ていたとなっては話は別物。

そこで多々良は草薙に対して徹底的に調べ上げるように指示を飛ばします。

指示を受けた草薙は仙波の居場所を突き止めます。

彼は終末期病院にて緩和ケアを受けていました。

この事実は、仙波の余命が長くはないことを示唆しているのです。

川畑重治と節子の出会い

川畑重治と節子は東京にある玻璃料理の店「はるひ」で出会います。

その「はるひ」で節子は働いており、客として重治が通いつめたことが交際のきっかけでした。

「はるひ」で働く以前の節子はホステスとして生計を立てていました。

しかし、「水商売からは足を洗いたい」そんな想いが彼女にはありました。

そこで、小料理屋の仕事を節子に紹介したのが仙波でした。

仙波と節子はホステスと客という関係だったのです。

そして、節子のホステス仲間には三宅伸子がいました。

三宅伸子とは、16年前の萩窪で仙波によって殺害された女性です。

川畑重治と節子の出会いを紐解くことにより、萩窪で起きたの事件の真相が垣間見えていくことになります。

果たして、16年前の事件と塚原の死は結びつくのでしょうか。

感想

自分を犠牲にしてまでも守りたいという『献身』が生んだ悲しい事件とも、1人の『我儘』が招いた悲劇とも捉えることができるのではないでしょうか。

しかし事件の過程がどうあれ、真相に気づきながらも守られた者が良き人生を紡いでいけるよう、丁寧にことを進める湯川の人間味を感じました。

自分は人に、どこまで捧げることができるのか…

大切な『誰か』が思い浮かんでくる作品です。

 
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テイケチ
◇25歳/男 ◇医療職/田舎で一人暮らし ◇小説紹介してます