『マスカレード・ナイト』は2017年に出版されたミステリー小説。
『マスカレード・ホテル』、『マスカレード・イブ』を加えたマスカレードシリーズの第3弾となっていて、今年の9月には映画が公開予定です。
練馬で起きた殺人事件の犯人が、ホテル・コルテシア東京の仮面舞踏会に現れるとの密告状が届く。
奇しくも、ホテル・コルテシア東京で再開を果たした新田と山岸は、ホテルの危機を救うことができるのでしょうか。
この記事では
『マスカレード・ナイト』のネタバレは避け、あらすじを解説していきます。
『マスカレード・ホテル』のネタバレ無し、あらすじ解説はこちら↓
東野圭吾『マスカレード・ホテル』原作 ネタバレ無しで、あらすじ・見どころを解説
あらすじ
練馬のマンションの一室で若い女性の他殺体が発見された。ホテル・コルテシア東京のカウントダウン・パーティに犯人が現れるという密告状が警視庁に届く。新田浩介は潜入捜査のため、再びフロントに立つ。コンシェルジュに抜擢された山岸尚美はお客様への対応に追われていた。華麗なる仮面舞踏会が迫るなか、顔も分からない犯人を捕まえることができるのか!? ホテル最大の危機に名コンビが挑む。
東野圭吾『マスカレード・ナイト』より引用
主な登場人物
―刑事、ホテルスタッフ―
新田浩介:警視庁捜査一課の刑事。ホテル内での潜入捜査でフロントスタッフになりすます。
山岸尚美:ホテル・コルテシア東京のコンシェルジュに抜擢される。
氏原祐作:コルテシア東京のフロントオフィス・アシスタントマネジャーで新田とペアを組む。真面目でルールに厳格。
能勢:品川署の刑事で新田とコンビを組む。愚鈍そうな見た目とは裏腹に、刑事としてかなりの切れ者。
―宿泊客―
日下部篤哉:女性へのプロポーズや会食のセッティングを山岸に依頼する。
狩野妙子:日下部篤哉の交際相手。
仲根緑:本名はマキムラミドリ。名前を偽り、夫婦のフリをして宿泊する。
浦部幹夫:チェックインの様子から、一流ホテルの利用に慣れていない様子がうかがえる。
曽根昌明:コルテシア東京のリピーター。いつも日帰りで利用する。
曽根万智子:曽根昌明の妻で貝塚由里の友人。
貝塚由里:曽根昌明の不倫相手。曽根万智子の友人。
―その他―
和泉春菜:トリマーとして働く若い女性。マンションの一室で遺体となって発見される。
見どころ
和泉春菜の死
ことの発端は匿名ダイヤルに寄せられた1つの通報でした。
その内容は「都内のマンション、ネオルーム練馬の604号室を調べて欲しい。女性の死体があるかもしれない」というもの。
通報を下に警察がネオルーム練馬604号室を捜索すると、ベッド横に若い女性の死体がありました。
胸と背中には電気コードが貼り付けてあり、死因は心臓麻痺。
そして、自宅からは陽性の妊娠検査薬が発見されました。
つまり、和泉春菜は誰かの子供を身ごもっていたことになります。
警察が捜査を進めるなか
一通の密告状が届きます。
『警視庁の皆様
東野圭吾『マスカレード・ナイト』より引用
情報提供させていただきます。
ネオルーム練馬で起きた殺人事件の犯人が、以下の日時に、以下の場所に現れます。逮捕してください。
12月31日 午後11時
ホテル・コルテシア東京 カウントダウン・パーティー会場
密告者より』
カウントダウン・パーティーとはコルテシア東京の名物で、大晦日に開かれる年越しイベントのことです。
参加者は4百~5百名と大規模。そして全員が仮装をして参加するため、仮面舞踏会の様相を呈しています。
この密告状を受けた警視庁は新田を含めた捜査一課をホテル・コルテシア東京に派遣します。
こうして新田は、数年前と同様にフロントクラークに扮してホテル・コルテシア東京で潜入捜査を行うことになりました。
そして山岸と再会を果たすことになります。
プロポーズ大作戦
山岸は以前まではフロントクラークとして働いていましたが、リニューアルオープンに伴い、新設されたコンシェルジュデスクでの勤務となっていました。
コンシェルジュとは、お客様の様々なリクエストに答えるスタッフのこと。
そんな山岸に難題を吹っかけてくる客がいました。
それが日下部篤哉です。
日下部は山岸に恋人へのプロポーズをプロデュースするように要望します。
準備を進める山岸でしたがトラブルが発生します。
コンシェルジュデスクに日下部のプロポーズ相手である、狩野妙子が現れたのです。
狩野は日下部から求婚されることを勘づいていました。
そこで、狩野妙子はプロポーズを断る旨を山岸に告げたのです。
山岸は頭を悩ましますが、最善の策を考えプロポーズを演出することに成功します。
その結果、2人はわだかまり無く別れを受け入れることができました。
しかし、プロポーズ翌日に
「カフェで日下部と狩野を目撃した」というスタッフがいたのです。
なぜ2人は失敗に終わったプロポーズの翌日に会っていたのでしょうか。
日下部と狩野の関係とはいかに。そして事件との関わりとは。
偽りの夫婦
「マキムラミドリ」は偽名を使い1707号室にチェックインします。
偽名は「仲根緑」。フロントでクレジットカードのコピーを取った時に発覚しました。
予約者は仲根伸一郎。偽名を使ってまで同じ苗字にしたのは、偽りの夫婦を演じるためでした。
部屋の荷物も、ルームサービスも2人分なのです。
しかし、仲根伸一郎が一向に現れないのです。防犯カメラをチェックしても1701号室にマキムラミドリ以外の人物の出入りは確認できませんでした。
そこで警視庁捜査一課はアリバイ工作なのではないかと考えます。
マキムラミドリの連れがどこかで事件を起こす。しかし、その人物はマキムラミドリとずっとホテルにいた…
エキゾチックな顔立ちをしているマキムラミドリ。彼女の本当狙いとは。
たどたどしい客
浦部幹夫は明らかに一流ホテルの利用になれていない様子でチェックインします。
物腰は洗練されているとは言い難いものでした。
ゴルフバックを持ち、大晦日の前夜から一人で2泊。クレジットカードを利用しないにもかかわらず、手持ちも僅か。
新田は要注意人物として浦部をリストアップします。
そんな浦部の下に宅配便が届きます。依頼主、届け先とも浦部となっており、内容は書籍でした。
新田は宅配便を浦部の部屋に持ち運びます。その時、浦部は使い古されたスウェットを着ていました。
新田はそのスウェットの足首に動物の毛が付着しているのを見逃しませんでした。
動物の毛と聞いて、思い出されること… それは、殺された和泉春菜がトリマーとして働いていたということです。
浦部がホテル・コルテシア東京に乗り込んだ本当の理由とは…
不倫相手の登場
曽野昌明は不倫相手と密会をするとき、ホテル・コルテシア東京をデイユース(日帰り)で利用していました。
チェックイン・チェックアウトは曽根が行い、別々で入退室をするのが曽根の常套手段です。
しかし、今夜は妻と子供を連れてやってきました。曽根のどこか居心地の悪そうな様子からは、今回の宿泊は妻が提案したものだということが伺えます。
普通に考えると、ふだん不倫をするために利用しているホテルに家族と訪れるようなことはしません。
そんな曽根を悲劇が襲います。
なんと、不倫相手である貝塚由里がチェックインしたのです。
貝塚由里はチェックイン後にロビーのソファーに腰かけていました。
いっぽう、曽根は外出先から戻り、玄関からロビーに向かい歩いていました。
そんな曽根のもとに、貝塚由里は小走りで向かっていきます。とうぜん、曽根は驚きの表情を浮かべます。
どうらや貝塚由里は曽根が宿泊することを知っていたようでした。
そしてその後、驚きべき事実が発覚しました。
貝塚由里と曽根の妻である万智子が楽しそうに話をしていたのです。
なんと、2人は知り合いだったのです。
果たして、曽根昌明はお灸を添えられてしまうのでしょうか。
感想
「マスカレード・ホテル」同様に1人1人のお客たちが怪しすぎます。1人1人の個性が強く、誰が犯人なのか。事件との繋がりはどうなのかと考えながら読み進めるワクワク感はたまりません。
犯人のバックボーンや関わる人間の多さから事件の構造はやや複雑な印象ですが、それゆえに予想できない展開や結末に驚かされました。
コンシェルジュデスクの設置など、新たな要素が加わったことにより「マスカレード・ホテル」とは一風かわった雰囲気を味わえる作品です。