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東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』原作のあらすじ・見どころ解説※ネタバレ無し 

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は2012年に出版されたファンタジー小説。2017年には山田涼介さん主演で映画化された、感動の名作です。

悩み相談を請け負っていた雑貨店に、時空を超え届く数々の手紙。小さな雑貨店が引き金となり、人と人との繋がり、想いが紡いだ奇蹟とは―――。

この記事では
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の重要部分のネタバレは避け、各章ごとのあらすじを解説していきます。

あらすじ

悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか? 3人は戸惑いながらも当時の店主・浪屋雄治に代わって返事を書くが……。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?

東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』より引用

設定解説

ナミヤ雑貨店は浪屋雄治が経営していた雑貨店のこと。この店で浪屋雄治は悩み相談を請け負っていました。

しかし体調不良により、1979年に廃業し現在(2012年)は営業していません。

当時の店主・浪屋雄治は自分の死期が迫る中、「もう一度店に連れて行って欲しい」「かつて私に悩み相談をしてくれた人達が未来から手紙をくれる。それを受け取りたい」 と息子である貴之に訴えます。

そして、もう一つの願いを遺書にしたためていました。

私の三十三回忌が近づいたら、何らかの方法で世間の人に告知してほしい。その内容は以下の文面だ。


「〇月〇日(ここには当然私の命日が入る)の午前零時零分から夜明けまでの間、ナミヤ雑貨店の相談窓口が復活します。そこで、かつて雑貨店に相談をし、回答を得た方々にお願いです。その回答は貴方にとってどうでしたか。役に立ったでしょうか。それとも役に立たなかったでしょうか。忌憚のない御意見をいただければ幸いです。あの時のように、店のシャッターの郵便口に手紙を入れて下さい。どうかお願いいたします。」

東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』より引用

妄想ともとれる父親の願いを貴之は聞き入れます。

そして、浪屋雄治がナミヤ雑貨店に戻った時、本当に未来から手紙が届いたのです。

つまり、貴之は浪屋雄治の死後、未来で遺書の内容を告知し、それを見たかつての相談者が手紙をくれたということになります。

過去・現在・未来を繋ぐ不思議な空間。
それが、ナミヤ雑貨店なのです。

各章解説

第一章 回答は牛乳箱に

時は2012年。強盗を働いた敦也・翔太・幸平は逃走し『ナミヤ雑貨店』に姿を隠します。

ナミヤ雑貨店は1979年に店を閉じ、現在は人の住んでいない廃墟状態でした。

そこで3人は不思議な体験をすることになります。

突然、店の前の郵便受けに手紙が投函されたのです。

差出人は『月のウサギ』

内容は悩み相談でした。詳細は以下の通りです。

自分はあるスポーツに取り組んでおり、オリンピックを狙えるかもしれない。しかし、最愛の彼の余命が僅かであるという状況。彼は自分がスポーツに打ち込み、オリンピックに出場することを夢見ていて、生きがいとしている。
しかし、自分としてはオリンピックは諦め、彼の看病に専念したい。どうしたら良いのか?

という重い内容。

敦也・翔太・幸平の3人は不思議に思いながらも、返答を書きます。

その返答を店頭裏の牛乳箱に入れると、いつの間にか回収され、新たな手紙が郵便受けに投函されてくるのです。

そうやってやり取りする中で3人は

『月のウサギ』は1979年に生きる人物で、過去から手紙を投函していることに気が付きます。

そして『月のウサギ』が指すオリンピックとは1980年の”モスクワオリンピック”

その大会は、日本が出場をボイコットした大会でした。

第二章 夜明けにハーモニカを

松岡克郎はミュージシャン志望の若者。実家の魚屋を継がず、両親の反対を押し切って上京してきました。

しかし、ミュージシャンとして芽が出ることが無く時間は過ぎていきます。

そんな中、父親が倒れたことを知り
「このまま夢を追いかけてもいいのか」「魚屋を継がなくてもいいのか」と疑問が生じます。

そして、その疑問を『ナミヤ雑貨店』にぶつけることに。

松岡から時空を超え手紙を受け取った、敦也・翔太・幸平は思いのままに回答をしたためます。

そして、3人から松岡克郎に返ってきた回答は想像を絶するものでした。

・あなたの悩みは贅沢だ
・ミュージシャンとしての才能は無い
・早く実家の魚屋を継げ

などと辛辣に、デリカシーのかけらもない言葉が並べられていたのです。

とうぜん、松岡は憤慨します。しかし、何度かやり取りをする中で、松岡は自分の気持ちに気が付き始めます。

「もう、夢は諦めるべきだ」と―――。

しかし、その後に送られてきた回答は松岡が予期せぬものでした。

・あなたはミュージシャンを目指し続ける
・あなたの楽曲は後世に残り、救われる人が必ずいる

と記されていたのです。

それから8年後―――。

松岡は音楽活動を続け『丸光園』という児童養護施設で慰問ライブをすることになります。

そこで歌った、オリジナルソング『再生』に惹きつけられた一人の少女との出会い。そして施設を襲った火災。

丸光園で松岡の運命が動き出します。

第三章 シビックで朝まで

※この章は【設定解説】の内容と重複している箇所があります。

時は1979年。

『ナミヤ雑貨店』の元店主・浪屋雄治は肝臓がんの治療のため病院に入院中。

しかし、雄治は「1日だけ店の様子を見に帰りたい」と息子の貴之に懇願します。

貴之は願いを聞き入れ、雄治を店に連れて帰ります。

そこで雄治を待っていたものは、かつて悩み相談をした人々から届く、未来の手紙でした。

その手紙を見て「自分が悩み相談をした事が間違っていなかった」と確かめることができた雄治。

そして雄治は貴之にもう一つの願いを託します。

それが自身の三十三回忌に一夜限りのナミヤ雑貨店の復活を告知してほしいというもの。

貴之は承諾します。

結局、貴之は雄治の三十三回忌まで生きることができず、孫の駿吾に想いを託します。

そして雄治の三十三回忌の年である2012年。

駿吾はパソコンで【ナミヤ雑貨店の復活】を告知します。

この三十三回忌の復活こそが、過去から現在(2012年)へ悩み相談の手紙が投函されてくる理由になります。

第四章 黙祷はビートルズで

和久浩介は40年前に暮らしていた街で『Bar Fab4』という店を見つけます。

Fab4とはFabulous4aの略で日本語訳では『素敵な四人』

素敵な四人とはビートルズの別称なのです。

『Bar Fab4』との出会いは、かつてビートルズに熱中した浩介にとって感慨深いものでした。

時は1970年。

和久浩介が中学生二年生の時、両親は経営する会社の業績が傾きだし、”夜逃げ”を決意します。

夜逃げに反対する浩介ですが両親の決意は固く、覆りそうにありません。

そこで浩介は『ナミヤ雑貨店』に手紙を書きます。

両親には付いて行かず、自分の道を切り開くべきか。それとも両親に付いていくべきか…

ナミヤ雑貨店からの回答は、「夜逃げは良くないが、家族で力を合わせるべき」というものでした。

その回答を得た浩介は両親と共に夜逃げをすることを決意します。

そして夜逃げは決行されます。

しかし、夜逃げの途中、高速道路のサービスエリアで浩介は父親と口論になります。その口論の末、浩介は「両親と繋がっていたい」、という想いが完全に切れてしまいます。

そこで浩介は両親から遠ざかるため、闇雲に走ります。すると、さっきとは別の駐車場に1台のトラックが止まっているのが目に入ります。

浩介は意を決してそのトラックの荷台に滑り込みました。その後、トラックは発車し、東京に到着します。

浩介は何のあてもないままに東京駅へと向かいますが、そこで警察に保護されることになります。

両親に迷惑がかかると思い、決して名前を明かさない浩介。

その後、彼は児童養護施設『丸光園』に移り、藤川博(ふじかわ ひろし)として生きていくことになります。

自分の名前や過去を捨て、生まれ変わった浩介。もちろん両親は行方不明のまま。

かつて、ナミヤ雑貨店に相談し、両親と共に夜逃げしたことは最良の選択だったのか。

『Bar Fab4』で起きた奇蹟とはいったい…

第五章 空の上から祈りを

時は1979年。

武藤晴美は高校卒業後、東京の会社でOLとして働きます。 

晴美は幼き頃に両親を交通事故で亡くし、その後は祖父母の家や『丸光園』で生活をしていました。  

彼女は亡き両親の代わりに自分を育ててくれた祖父母の生活を助けたいと、本業の傍らで水商売を始めます。

水商売は軌道に乗り、稼ぎも良いものでした。

そこで、ある疑問がわいてきます。

「OLをやめ水商売で生活していくべきではないのか」と。

経済的に自立した女性になり、祖父母の生活を助けたいと考える晴美は
『ナミヤ雑貨店』に相談の手紙を投函しました。

ナミヤ雑貨店にて、晴美からの手紙を受け取ったのは、敦也・幸平・翔太の3人。

3人は手紙を読み、晴美の思慮の浅さを指摘。「水商売は続けるべきではない」と切り捨てます。

3人からの回答を受け取った晴美は憤ります。

そして2通目の手紙で
「自分は水商売に対して、確かな覚悟を持っている」と反論しました。

しかし、晴美は次第に自身が展開するビジョンの甘さに気づきます。

そんな晴美に3人は経済を勉強するようにアドバイスをします。

具体的には
不動産売買、証券取引の2つです。

加えて、この投資によって儲けられるのは1989年までだと明言をします。

つまり3人は
1980年後半~1990年初頭の”バブル景気”のことを晴美に告げたのです。

その後、晴美は3人のアドバイスに従いバブル景気で大きく利益を上げ会社を設立。大きな財を築くことになります。

しかしそれがあだとなり、晴美は強盗の標的となってしまいます…

感想

推理小説のイメージが強い、東野圭吾さんには珍しい感動&ハートフルな作品でした。

『手紙』とは文字だけの疎通になります。しかし、その文字は生身の人間が想いを伝えるために記したもの。その手紙から相手の感情や意図を汲み取るということはこれほどまでに奥深いことなのだと、浪屋雄治を見て思うところです。

人と人との繋がりが希薄になりつつある今だからこそ、”人との繋がりは奇蹟を起こす”という何度も聞いたことのある言葉が自然と出てきますし、『手紙』という媒体の魅力を感じられると思います。

人がくれる、純粋な温かさを感じることができた作品でした。

ABOUT ME
テイケチ
◇25歳/男 ◇医療職/田舎で一人暮らし ◇小説紹介してます