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東野圭吾『虚ろな十字架』あらすじ・見どころ解説 ※ネタバレ無し 死刑判決は通過点だ―――。

『虚ろな十字架』は2014年に出版されたサスペンス小説。

愛する人を殺された遺族たちの死刑に対する想いや思想が緻密に描かれています。

この記事では
『虚ろな十字架』の重要部分のネタバレは避け、あらすじに沿い、見どころを解説していきます。

あらすじ

中原正道・小夜子夫婦は一人娘を殺害した犯人に死刑判決が出た後、離婚した。数年後、今度は小夜子が刺殺されるが、すぐに犯人・町村が出頭する。中原は、死刑を望む小夜子の両親の相談に乗るうち、彼女が犯罪被害者遺族の立場から死刑廃止反対を訴えていたと知る。一方、町村の娘婿である仁科文也は、離婚して町村たちと縁を切るよう母親から迫られていた―――。

東野圭吾『虚ろな十字架』より引用

主な登場人物

中原道正:動物葬儀屋であるエンジェルボードに勤務。浜岡小夜子とは元夫婦。11年前に娘の愛美を失う。

浜岡小夜子:娘の死後、道正と離婚後しフリーライターとして活動する。町村に刺殺される。

中原愛美:道正、小夜子の子供。8歳の時に強盗に殺される。

仁科文也:大学病院小児科の医師。花恵の夫。

仁科花恵:町村作造の娘で、仁科文也の妻。過去の出来事から父親の作造を恨んでいる。

町村作造:仁科花恵の父親。浜岡小夜子を刺殺する。

井口沙織:水商売で生計をたてる。万引き依存症で小夜子から取材を受ける。

蛭川和男:刑務所から仮出所中に強盗を犯し、中原愛美を殺害する。

見どころ

愛娘の死

事件が起きたのは現在から11年前。

当時、中原道正には妻の小夜子と娘の愛美という家族がいました。

幸せな日々を送っていた中原夫婦を突然の悲劇が襲います。

強盗によって愛美が殺されたのです。

愛美はまだ小学2年生でした。

犯人は蛭川和男(48歳)

蛭川は若き頃に犯した殺人罪で服役しており、仮出所中の身でした。

中原夫婦の望みは
蛭川に対して”死刑”が執行されること。

死刑が執行されることで、自分たちが何一つとして救われないことを自覚しながらも、悲しみを乗り越えていくための通過点として認識していた中原夫婦。

結果として
蛭川和男に対し、死刑が求刑されます。

その後、中原夫婦は事件の面影を払拭できず、離婚し別々の道を歩み始めます。

小夜子の死

道正と離婚した後、小夜子はフリーライターとして活動していました。

しかしそんな中
小夜子は強盗に刺殺されます。

犯人は町村作造(68歳)

小夜子と町村との関係性は確認できず、事件は単なる金銭目的の強盗だと判断されました。

道正は小夜子の死をキッカケに、彼女がフリーライターといて活動していたことを知ります。

そこで小夜子が『万引き依存症』につての執筆した記事を目にします。

そこには4人の女性が取り上げられ、1人1人のエピソードが記されていました。

その中で、道正は4番目に取り上げられた女性だけ異質のように感じます。その女性だけ、自分を罰するように万引きをしていたからです。

その女性の名は、井口沙織。

井口は取材を通じて小夜子に世話になったと、葬儀に参列していました。

そして小夜子の仕事資料から意外な人物と接触した形跡が出てきました。

その人物は仁科文也。

驚きべきことに仁科は、小夜子を殺した町村の娘婿(娘の夫)だったのです。

小夜子はなぜ、仁科と接触したのでしょうか。そして、町村に殺されたことと何か関係があるのでしょうか…

贖罪の理由

小夜子を刺殺した町村作造の婿娘である仁科文也は、義父の起こした事件に対して異常なまでに贖罪をします。

そして、小夜子の両親に向け、お詫びの手紙をしたためます。

道正はその手紙を読み、仁科文也と会うことにします。

そこで仁科文也は道正に語ります。

「義父があんなことをした原因は自分にもあると思っていますから、縁を切っておしまいにするなんて、そんな身勝手なことはできません。」

「私は……責任を果たさなければなりません。逃げるわけにはいきません」

東野圭吾『虚ろな十字架』より引用

仁科文也が語る『原因・責任』、殺人犯である義父と縁を切らない理由とは…

道正は仁科の抱える”秘密”に徐々に近づいていきます。

仁科文也・井口沙織のつながり

仁科文也と井口沙織にはつながりがありました。

2人は富士宮(静岡県)の出身で中学生の頃、交際していたのです。

この事実を知った道正に、1つの疑問が浮かびます。

『小夜子の死は本当に金銭目当ての強盗だったのか?』と。

小夜子は井口沙織を取材した後に、仁科文也に接触。その後、仁科の義父である町村に刺殺された。

この事実から小夜子の死が単なる強盗でなかったことが推察されるのです。

複雑に絡み合う事件は、ある人物たちの”悲しすぎる過去”に起因するものでした。

感想

本書を読み、強く感じた事は”償う”とはいかなる行為なのか、ということです。

作中で語られる『事件は1つ1つ違うのに、いきつく結末が死刑と一言で片づけていいのか』という、死刑反対側の主張は強く印象に残っています。

しかし、死刑意外に道があるのかと言われれば、言葉に詰まります。

模範解答のない問いに、人はどこまで迫ることができるのでしょうか。

本書は、同著者の『さまよう刃』を沸騰とさせる、理屈では語れない作品だと感じました。

ABOUT ME
テイケチ
◇25歳/男 ◇医療職/田舎で一人暮らし ◇小説紹介してます