「私が彼を殺した」は1999年に出版された本格推理小説で、加賀恭一郎シリーズの第5弾。
容疑者は3人。脚本家の死の真相に、加賀恭一郎が挑みます。
本書の特徴といえば、犯人明かしがされていない事。ぜひ、皆さんも本格推理を体験してみて下さい。
この記事では、「私が彼を殺した」の重要部分のネタバレは避けながら、見どころを解説しています。
あらすじ
婚約中の男性の自宅に突然現れた1人の女性。男に裏切られたことを知った彼女は服毒い自殺を図った。男は自分との関わりを隠そうとする。醜い愛憎の果て、殺人は起こった。容疑者は3人。事件の鍵は女が残した毒入りカプセルの数とその行方。加賀刑事が探りあてた真相に、読者のあなたはどこまで迫れるか。
東野圭吾「私が彼を殺した」より引用
主な登場人物
加賀恭一郎:練馬警察署の刑事。
神林貴弘:神林美和子の兄。妹に特別な感情を抱く。
神林美和子:神林貴弘の妹。詩人。穂高誠と婚約している。
穂高誠:脚本家。神林美和子と婚約している。女性関係でトラブルを抱える。
駿河直之:穂高誠のマネージャー。穂高に対して嫌悪感を抱く。
雪笹香織:神林美和子の担当編集者。過去に穂高と関係を持つ。
浪岡準子:動物病院の看護師。穂高と関係を持ち堕胎させられる。
見どころ
犯人が明かされない
本書は最後まで読んでも、犯人が書かれていません。そのため、読者が各々推理を働かせる必要があります。
しかし、本書には『推理の手引き』という袋とじ解説が付属しています。この手引きが、推理の手助けや答え合わせの役目を果たしてくれてます。
ちなみに、私は『推理の手引き』の存在を知らずに検索して調べました…
神林兄弟の関係
神林貴弘・美和子は幼いころに両親を亡くし、別々に暮らすことを余儀なくされました。それから15年後、2人の兄弟は再び共に暮らすことになります。
15年もの間、離れて暮らしていた兄弟は、それまでの孤独を埋め合わせるように家族としての時間を過ごします。
しかし、時が経つにつれ、2人の関係は兄弟としてではなく、男女としての関係へと変化していきました。
特に兄の貴弘は美和子を特別視しており、それは周囲の人間が気づくほど明白なものでした。
穂高誠の死
穂高は以前から鼻炎に悩まされていたため
鼻炎薬の入ったピルケースを常日頃から持ち歩いていました。
穂高の死はその鼻炎薬が原因でした。
美和子との結婚式、当日。何者かがピルケースに、毒入りの鼻炎薬を仕込み、それを飲んだ穂高は式の最中に絶命したのです。
穂高誠を一言でいうなら「ク〇野郎」
女癖が悪く、数多くの女性を不幸にしてきた人物。浪岡準子、雪笹香織も、穂高の犠牲に会った女性の中の1人になります。
それ故に、多くの人間から恨みを買っていた穂高。当然の報いを受けた形となってしまいました。
3人の容疑者
ここでは3人の容疑者の動機について確認していきます。
No.1 神林貴弘
妹の美和子を特別視しており、他人の手に渡ることを受け入れ切れていない。何者かに美和子との関係を知られ、脅迫される。
No.2 雪笹香織
以前、穂高と関係を持っていたことがあり、その時に堕胎をしている。今では穂高を心底嫌う。
No.3 駿河直之
浪岡準子に好意を寄せていたが、穂高に奪われてしまう。その後、穂高は準子を妊娠・堕胎させている。それ故、穂高に対し激しい憎悪を抱く。
穂高を”殺す”動機のある3人。果たして穂高に手を下した人物とは…
感想
穂高誠をはじめ、登場人物にここまで人間味を持たせられると、”殺人”という選択に合点がいきます。
そんな、登場人物たちによる物語もさることながら、容疑者3人の中から犯人を割り出すという、ドストレートな推理小説としても楽しめました。
皆さんも是非、本格推理に挑戦してみて下さい。